リスクコミュニケーションは、リスクを分析する過程でこれらに関係する評価者、管理者、消費者、研究者、事業者などの間で情報や意見の交換をすることです。
SNSなら、使用時でのリスクとなる炎上や情報漏洩、誹謗中傷などに対する情報共有を行い、意見交換や対話によってお互いに理解を深めていくこととなります。
リスクコミュニケーションにより、早期にリスクを知って最も適切な対応ができたり、信頼性の回復にも役立ったりしますが、どのように取り組むべきでしょうか?
この記事では、リスクコミュニケーションが何かに加えて注目されている理由などについて解説します。
リスクコミュニケーションとは?
リスクコミュニケーションは、あるリスクに対して関係している当事者全員が情報を共有して意見の交換などを行うことを言います。
例えば、地域開発によって起こる可能性がある環境汚染のリスク、農作物に対する残留農薬などの健康被害リスク、工場建設による周辺住民への健康や安全に対するリスクなど、様々な状態においてリスクがあることを伝える必要があります。
これらのリスクに対しては、専門的な視点から具体的なリスクに内容に加えて起こる確率やリスクを軽減するための方法なども決めて、必要な人たちとこれらの内容を共有し意見交換などを行うのがリスクコミュニケーションです。
事前にリスクに対しての情報を伝えておくことで、万が一リスクが起こった時に不要なトラブルを避けることができます。
リスクコミュニケーションは、企業などでも取り入れられています。
何かしらの事業を行う際には、様々なリスクを伴う可能性があるからです。
リスクの大きさに関係なく、影響を受ける可能性がある場合にはリスクについて合意を得るためにも欠かせません。
お互いにリスクに対してどのように対処すべきかを検討することが、リスクコミュニケーションを実施する意義となっているのです。
特に情報セキュリティなどの分野では、関係者同士のリスクコミュニケーションが重要であり、認識の共有によって効果的な対策が実施できます。
デジタル社会の今、リスクコミュニケーションが大きな役割を担っているのです。
徐々に変化しつつあるリスクコミュニケーション
リスクコミュニケーションの概念は、時代によって少しずつ変わってきています。
現在は、様々な分野でリスクへの懸念が強くなってきたため、リスクコミュニケーションが重視されている傾向です。
しかし、1995年代はリスクコミュニケーション=自分の立場を正当化するという意図が感じられていました。
多くの分野で、リスクについて言及することはほとんどなく、潜在的な危険性についてのコミュニケーションを取ることは少なかったのです。
しかし、阪神淡路大震災が起きた際に、道路をはじめとするインフラの崩壊、大規模な災害、人的な被害が多く起こったことで今までの安全神話が崩壊し、皮肉にもリスクコミュニケーションの重要性が認識される結果となりました。
特に原子力発電所では「事故は起こらない」と全面的にアピールしていましたが、この大災害をきっかけに改訂することになっています。
このような背景から、次第にリスクコミュニケーションの重要性が認識されていき、2000年代になると農林水産省でも消費者情報官というリスクコミュニケーション専門の職が設置されました。
東日本大震災の復興でもリスクコミュニケーションが重視され、放射性物質に対する社会問題に加えて、国民の不安軽減のための情報発信や対話が積極的に行われ、相手への伝達やメッセージの適切さなどが重視されています。
リスクコミュニケーションは企業でも取り入れるべき?
今まで、企業においてもリスクコミュニケーションが必要と認識していないケースがあったでしょう。
しかし、現在は企業でもリスクコミュニケーションを積極的に取り入れるべきという考えが浸透しています。
なぜ、リスクコミュニケーションが企業でも必要なのでしょうか?
企業ブランドの価値を守り、向上させるため
万が一、大きな事故や不祥事が発覚した場合、誠実で迅速な対応をすることで企業のブランドや価値を守るだけでなく、今後向上させることができます。
問題発生時の混乱を最小限にするため
何かしらの問題が生じた時、事前にリスクコミュニケーションをしておくことで緊急事態に備えて迅速な対応ができます。
危機管理マニュアルなどの準備や用意を行い、社内での情報共有できる体制を構築すればリスクが起こった時でも混乱を最小限にできるでしょう。
h3:社会的責任を果たすため
企業は利益目的で事業を行うのではなく、社会的責任を果たす必要もあります。
リスクコミュニケーションを通じて、社会に対しての責任を明確にしておくと持続した経営が実現できるでしょう。
h3:利害関係者の信頼を得るため
本来、利害関係者に対しては正確な情報を伝えておかなければなりません。
しかし、リスクのある情報を隠していたり、不適切な対応をしてしまったりすると、顧客や取引先はもちろん、投資家などからの信頼を失ってしまうでしょう。
信頼を得るためには、情報の透明性をきちんと持ち、開示して適切な対策を取らなければ信頼を失うだけです。
どのような事態でも対応する姿勢を示すことで信頼を得ることができるでしょう。
過去の事例からリスクコミュニケーションを確認しよう
ここでは、過去に起こった問題について、リスクコミュニケーションの具体例についてご紹介します。
食品会社の食中毒事件
ある食品会社で、牛肉偽装についての問題が発覚しました。
企業側が社内調査委員会を設置し、その期間中は牛肉を含めた加工品の製造や販売を停止する措置を取りました。
しかし、翌日には産地偽装に加えて水増し請求したことも発覚し、問題から1週間経過した際に調査結果として本社を含めた3つの部署での偽装が発表されたのです。
この事件から、食品会社は問題を重く考え食肉事業からの撤退表明、社長の辞任という形になりました。
しかし、これらの問題で警察も動き、食品会社の本社を詐欺容疑で捜索、従業員1000人の解雇を発表し、なんとか再建策を模索したものの農水省の調査でも新たに輸入豚肉を国産と偽装したことが発覚し、結果的に解散が決定したのです。
大きな問題になった「嘘」
この事件が最初に発覚した時、社長が「偽装したのは本社の判断ではなく、工場長の独断で決めた」と発表したことです。
意図的に話したかどうかは別として、その後の調査で嘘であったことが発覚したため一気に信用を失うことになりました。
きちんとリスクコミュニケーションができていれば、問題発生時に早く正しい情報を収集できただけでなく、公表できた可能性が高いでしょう。
さらに、企業のイメージを左右しかねないマスコミ対応においても甘かったと判断できます。
実際に小さな品質クレームについて、社長に連絡する体制が取られていたものの、このような事態を想定していなかったと語っていることから、うまく機能していないことがわかります。
記者会見などマスコミに対応する際には、謝罪や原因究明に加えて具体的な再発防止策や責任の所在をはっきり言及することで反省している姿勢が伝わります。
意見を発表する人がぶれていた
この食品会社の会見は、最初に子会社の地域統括を担う課長が平日に2回、日曜日に1回会見を実施しています。
本社でも問題は、専務の会見のみとなっていて会社の顔となる社長は自身の辞任会見のみとなりました。
この時にマスコミはいくつもの疑惑を報道していたため、毎回疑惑が浮上するたびに子会社の課長が謝罪する形になっていたのです。
ここで、会社の顔となる社長が全面に立ってスポークスマンになることで、責任回避のイメージが払しょくできましたが、様々な責任者がその度に謝罪したことで混乱や誤解が生じてしまいました。
社長が雲隠れしたマイナスイメージが付いた
農水省から問題を指摘された際に、社長がマスコミに囲まれて進退問題を問われる事態になりました。
しかし、この時点で社長が質問を約3分という短時間で切り上げ、走り去ってしまったのです。
さらに、その後の会見も専務が代表となり社長が現れなかったことから真相解明に積極的な姿勢に見えず、マイナスイメージが定着しました。
情報を開示しない会社と認識された
社長がようやく会見に出席した際に、調査委員会からの調査報告を行い、本社に加えて3つの部署で偽装していたことをマスコミに発表しました。
しかし、これらの調査結果を伝える期間が長かったため、中間報告をすべきだったという意見が飛び出したのです。
さらに、これらの問題が調査結果として発表されたことで過去の会見での内容が嘘だったことが明らかになり、その部分だけでも訂正すべきという指摘がされました。
h3:従業員の解雇で企業イメージ失墜
これらの問題発覚後に、パートやアルバイトなどの従業員を1000人解雇して再構築するというメッセージを発表しました。
しかし、会社に全責任があるにも関わらず経営再建を優先して弱者を最初に切り捨てたという企業イメージが定着したのです。
追い打ちをかけるような企業イメージの失墜があったということです。
h3:マスコミを敵に回したことで大衆を敵にした
再建計画を発表した際に、マスコミ各社が本社の玄関前に集まりました。
それだけ、世間からの注目を集めていたことがわかります。
しかし、本社の広報部はアポイントのない取材を受けないこと、電話でのアポイントが必ず必要であると応答したことで、記者は本社前から1つずつ目の前の建物に連絡することになりました。
目の前に来ているマスコミに対して電話での受付に限らず、直接面談で受けることも選択できたはずです。
その後、広報部が会社側の談話を読み上げましたが、ここで談話のコピーを求めた記者に対して既にファックス済みと言い、コピーを配布することはありませんでした。
この判断も報道機関に対して堂々と話をしなかったと批判を受け、最終的には再建の断念、解散という流れになりました。
何か問題が起こった時を想定して行うのがリスクコミュニケーションです。
事前にリスクについて把握し、これらをきちんと伝えることで信頼関係が築けます。
過去の事例では、全くリスクコミュニケーションができていなかったことに加えて、体制を整えていなかったことで大きなマイナスイメージが定着し、結果的に会社の再建もできませんでした。
海外では、リスクコミュニケーションの一環として社長や重役クラスが模擬会見などの練習も行っています。
万が一に備えるためにリスクコミュニケーションについて積極的に取り組んでみましょう。
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