オフショア開発とは、ソフトウェア・アプリ・システムなどの開発から運用・保守業務などを海外の企業に委託することです。

オフショア開発は元々日本では大手企業や外資系企業などが行う傾向にありましたが、現在は中小企業もオフショア開発に注目し、実際に委託元となるケースが増えています。

なぜオフショア開発が中小企業からも注目されるようになったのでしょうか?

今回は、オフショア開発が注目される背景や実施するメリットをご紹介します。

また、実際に海外企業へ委託する場合の注意点についても解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。

 

オフショア開発が注目されている背景

これまでは大手企業によるものが多く見られましたが、中小企業でもオフショア開発が注目されています。

まずはオフショア開発が注目を集めるようになった背景について解説していきましょう。

 

IT人材が不足している

経済産業省が発表した「IT人材需給に関する調査」によると、IT関連市場の規模は拡大していく一方で2030年までIT人材の不足は増加の一途をたどると予測されています。

IT人材が不足している理由として、単に少子高齢化による労働人口の減少だけが影響しているわけではありません。

様々なサービスにIT技術が関わるようになったことでIT人材の需要は大きく拡大しているものの、人材育成がそのスピードに追い付いていないこともIT人材不足の要因と言えます。

また、人件費にかかるコストも高騰しています。

こうした理由から、比較的人件費を抑えられ、なおかつIT人材も豊富な海外企業にオフショア開発を委託するケースが増えているのです。

 

グローバル化・DX化の推進

新型コロナ禍以降、中小企業でもグローバル化やDX化の推進が急速に行われてきました。

将来的なグローバル化を目指す企業にとって、多様な人材を確保することは重要な要素となりますが、実際に国内だけで多様な人材を確保しようとしても難しいでしょう。

しかし、オフショア開発を委託することで多様な人材を確保しつつ、人材採用のコストやリスクを軽減できます。

 

委託先となる海外の技術力向上

日本国内ではIT人材が不足していますが、海外では優秀なIT人材を育てる動きが活発となっています。

特にベトナムでは人件費が安いだけでなく、2000年頃からIT人材の育成を国策として取り入れており、優秀なIT人材の育成に一役買っています。

また、海外ではITスキルに加えて英語を話せる人も多く見られます。

英語が理解できることで、AIやブロックチェーンなどの最新技術を翻訳なしで理解でき、システム開発に役立てることも可能です。

こうした委託先となる海外の技術力が高まっていることも、オフショア開発が注目される背景のひとつになっています。

 

オフショア開発の手法が確立してきた

元々オフショア開発は、大手企業が委託先に開発を任せるという、いわば挑戦的なものでした。

しかし、現在は企業のデジタル化も進み、オフショア開発の手法も確立されてきました。

手法の確立によって大手企業だけでなく、中小企業でも活用できるようになり、さらに委託先として選べる国や企業が増えたことで広く普及することになったのです。

 

オフショア開発を実施するメリット

自社からオフショア開発を委託する場合のメリットは以下の通りです。

 

コストの大幅削減が期待できる

オフショア開発における一番のメリットは、コストを大幅に削減できることです。

IT人材の不足により需要が高まっている日本では、エンジニアを確保するためにそれなりの人件費が必要となります。

また、システムやソフトウェアの開発が延びてしまえば、その分コストも高額になっていくでしょう。

しかし、オフショア開発先にあがる海外は日本に比べて物価が安く、エンジニアの人件費も比較的安価です。

国内で同レベルのスキルを持つエンジニアを雇用するより、オフショア開発の方がコストを抑えられます。

 

優秀なIT人材を確保できる

国内で優秀なIT人材を確保したくても、そもそも人材が不足していることや雇用するのに大幅なコストがかかってしまうなど、様々な課題が発生します。

また、進めたいプロジェクトで高度な技術を必要とする場合、さらに人材の確保は難しくなるでしょう。

オフショア開発であれば海外から優秀なIT人材を委託でき、人材不足の問題も解消できます。

 

短期での納品も可能

オフショア開発ではクラウドシステムを活用することで、場所を問わず同時に作業が進められます。

作業が同時に進むことで大幅に納期を短縮することも可能です。

また、海外から優秀なIT人材を確保できれば、難しい開発にも取り組めるでしょう。

 

自社にノウハウを蓄積できる

 

社内に在籍するIT人材が少ない場合、開発を外注に依頼するケースもあるでしょう。

確かに外注でも開発することは可能ですが、プロジェクトが終了した時点でメンバーは解散することになり、開発に関連する様々なノウハウを自社に蓄積できなくなってしまいます。

こうしたノウハウを自社に蓄積できないのは大きなデメリットと言えます。

オフショア開発の場合、人件費を抑えられることから案件単位で発注せず、仕事量に合わせて契約を行うことも可能です。

契約中は自社に在籍する人材と同じように仕事を任せられるため、ノウハウをそのまま自社に蓄積できるようになります。

 

海外企業へ委託する場合の注意点

企業にとってメリットの多いオフショア開発ですが、実際に行う際にはいくつか気を付けるべきポイントもあります。

どのような点に注意すべきか解説していきましょう。

 

コミュニケーションの構築は必須

海外と日本では当然ながら言葉と文化が異なります。

そのため、プロジェクトを遂行する中で齟齬や情報の食い違いが生じてしまう場合もあるでしょう。

これをきっかけにプロジェクトが予定より遅延してしまったり、品質が低下したりする問題にもつながります。

こうしたリスクを回避するためにも、委託先の企業とコミュニケーションを構築することは重要です。

ミーティングや情報共有は定期的に行うことはもちろん、コミュニケーションガイドの作成や従業員の語学研修を実施するなど、様々なサポートが必要となります。

 

スケジュール管理に気を付ける

日本と海外では時差が生じており、また祝日なども異なります。

例えば、ベトナムでは2月8日~14日まで「テト(旧正月)」という長期休みがあり、この期間は会社が休みになることも多いです。

こうした委託先の休日・祝日などの事情も把握した上でスケジュール管理を行う必要があります。

また、開発納期を指定する場合、時差なども踏まえて設定することも大切です。

進捗に遅れが生じていないか、定期的に確認するようにしましょう。

 

セキュリティ対策の強化を図る

オフショア開発では海外の委託先とデータのやり取りをする機会が多く、気を付けていないと情報漏洩のリスクが高まってしまいます。

また、日本とは法域が異なる海外で開発を進めた場合、法律の違いによってトラブルに発展する可能性も否定できません。

このような課題に対して、事前にセキュリティ対策の強化を図っておく必要があります。

 

まとめ

今回は、オフショア開発が注目される背景やメリット、委託する際の注意点についてご紹介してきました。

オフショア開発は企業にとって大幅なコスト削減や優秀なIT人材を確保できるなど、様々なメリットをもたらします。

以前までは大手企業が挑戦的な意味合いで行われていましたが、現在では技術の進歩と手法の確立によって中小企業でも取り組みやすくなりました。

オフショア開発を検討されている方は、今回ご紹介した注意点も考慮しつつ計画を立ててみてください。