企業にとって、ブランドは大きな価値のあるものであり、なくてはならない重要な資産です。

ブランドのあり方はそれぞれ異なりますが、適切に保護して資産を守るための対策を講じることは企業に必要不可欠なことでもあります。

そこで重要となってくるのが、ブランドセキュリティです。

今回は、ブランドセキュリティとはどのようなものなのか、企業の資産価値を守っていくためにはどのような対策を打つ必要があるのか、ご紹介します。

 

ブランドセキュリティとは?ブランドプロテクションとの違い

ブランドセキュリティは、企業のブランド保護における考え方のひとつです。

ここでは、ブランドセキュリティの特徴とブランドプロテクションの違いについてご紹介します。

 

ブランドセキュリティとは

ブランドセキュリティを一言で言うと、包括的なブランディングのことです。

ブランディングは、会社運営はもちろん商品開発やそれに伴うマーケティングをする上でも必要なものです。

企業全体で実施するブランディングは、ブランドの実現に向けて具体策を立案し、実現できているか確認し、同じ意識と目標を持って事業に取り組むことにつながります。

企業にとって、ブランドは商標や銘柄でもあり、大きな価値があるものです。

企業のブランドが確立できていると、多くの顧客から支持されるようになり、商品やサービスの購買促進につながります。

ブランディングは、企業や商品・サービスに対するイメージを定着させるための戦略です。

例えば、商品のロゴやパッケージのビジュアル、商品・サービスを利用することで得られる体験などが該当します。

商品やサービスを通じて顧客に体験や感動を与え続けることで、企業は市場で優位な存在となっていき、集客効果向上につながり、結果的に企業の評判も上がっていきます。

ブランドセキュリティは、アメリカのシンクタンク「Constellation Research社」によってこのように定義されています。

・プロセスやテクノロジーを活用して顧客のシグナルやデータを透過的に集約・分析・共有していく際のデータや権限、同意、インテリジェンスを保護し、顧客とブランドとの関係の信頼性や持続可能性、耐久性を確保できる包括的な戦略

・侵入・侵害が顧客の関与、また相互作用に及ぼす影響を防止及び軽減するための意図的なテクノロジーフレームワーク

ブランドセキュリティは、企業が顧客から得たデータを保護すると同時に、顧客とブランドにおける信頼関係を守るためのものとなっています。

 

ブランドプロテクションとは

ブランドプロテクションはブランドセキュリティと類似した言葉ですが、考え方が異なっています。

ブランドプロテクションは、ブランドセキュリティよりも物理的に守るための手段のことです。

セキュリティという言葉は、守るべき対象を安全な状態に保つという意味があります。

そのため、守る対象がブランドの根幹となる商標権や顧客データなど、実体のない無形資であるケースが多いです。

一方、プロテクションはセキュリティを実現するための手段を指します。

例えば、商業権や顧客データのセキュリティを実現するために実施する、商標管理やドメイン管理、Webサイト監視などです。

ブランドセキュリティという目的を達成するためには、ブランドプロテクションはなくてはなりません。

具体的な戦略や活動を実施すれば、ブランドの評判や価値を守り、企業が長期的に成功し続けることが可能になります。

ブランドプロテクションの手法としては、商標管理やドメイン管理だけでなく、法的措置における取り組みや消費者教育なども含まれます。

近年は正規ブランドを謳った模倣品や不正な広告、商標権の侵害などが後を絶ちません。

こうした問題に対処するには、適切な法的措置も必要になってきます。

また、パートナーシップや認証プログラム構築等、他社と協力関係を築くこともブランドプロテクションのひとつです。

 

ブランドセキュリティが必要とされる訳

企業にとって、ブランドセキュリティは優先すべき重要なことです。

その理由は、企業が倒産するリスクを避けるためです。

ブランドセキュリティを守ることができていない企業は、企業の資産価値低下や業績不振につながる可能性があります。

現代はコロナ禍を経て、世の中の様々なもののあり方が変化する中、商品やサービスの価値や提供もリアルからバーチャルへと変わりつつあります。

これまでは、ブランドのあり方もリアルなものが多かったため、ブランドセキュリティではなくブランドプロテクションを講じることで企業や顧客の安全を守ることができました。

しかし、最近ではX(旧Twitter)やFacebook、InstagramなどのSNSを通じて、企業だけでなく個人がブランドを確立しやすくなっています。

これはパーソナルブランドと呼ばれるもので、これを高めることができればビジネスでも成功しやすいと言われています。

中には、SNS市場で存在感を出し、売り上げを伸ばすことに成功した企業も多いでしょう。

しかし、パーソナルブランドはバーチャルなものだからこそ、外部からの風評被害のリスクも隣り合わせとなっており、企業の評判が著しく低下する恐れもあるのです。

ブランドのあり方がリアルからバーチャルなものへと変化し続けている今、ブランドプロテクションでは適切な対処ができない可能性があります。

現在、企業にとって必要なのは、デジタル時代に対応した戦略の更新を続けていき、適切なブランドセキュリティを講じていくことだと考えられています。

 

ブランドセキュリティには情報セキュリティも重要となる

適切なブランドセキュリティを講じるためには、情報セキュリティも重要となってきます。

ここでは、情報セキュリティの考え方とブランドセキュリティの関係性をみていきましょう。

 

情報セキュリティとは

情報セキュリティは、インターネットやパソコンを安全に使用する際に、個人情報の漏えいや改ざんを防ぐためのものです。

例えば、情報の機密性や完全性、可用性の確保が挙げられます。

情報の機密性・完全性・可用性の意味は以下のとおりです。

・機密性:許可された人・限定された人のみが情報にアクセスできる状態

・完全性:情報が破壊・消去・改ざんされない状態

・可用性:許可された人・限定された人が必要な時に情報のアクセスし続けることができる状態(中断する必要がない状態)

ブランドセキュリティを強化していくことは、情報セキュリティの確保にも直結するため、双方の考え方は似ています。

情報資産を守るためには、機密性・完全性・可用性のバランスを考慮して対策をしなければなりません。

適切な情報セキュリティは、不正アクセスを防ぎ、機密情報の漏えいやデータの改ざん、サービスの停止などを回避することにつながります。

 

企業のブランド保護には情報セキュリティの確保が重要

先にも述べているように、企業がブランドセキュリティを実施していくのは、確率した企業ブランドを保護するためです。

ブランドセキュリティの実現には、ブランド保護・パーソナルブランドセキュリティの確保・情報セキュリティの確保が必要です。

ブランドセキュリティを実施しないリスクとしては、企業の評判が下がり、資産価値の低下や業績不振などが挙げられます。

情報セキュリティを実施しない場合も、ブランドセキュリティと同様、2つのリスクがあります。

それは、企業に対する信用が失われることと、多額の損失を受けることです。

セキュリティ対策が不十分で、実際に顧客データの流出や何らかの問題が発生した場合、顧客からは「適切なセキュリティが行えない」「機密情報の保護ができない」などとマイナスなイメージが増え、信用を失ってしまう可能性があります。

また、事業を行う上で重要なシステムが改ざんされた場合、顧客や取引先に対する損害賠償やシステムの修復・改善費用が必要です。

この2つのリスクは、ブランドセキュリティでも同じことが言えます。

企業ブランドの確立には、顧客や取引先企業の信頼が重要になってきます。

信頼されなくなった企業は、徐々に売り上げが低下し、最悪の場合倒産に発展してしまう恐れもあるのです。

ブランドセキュリティの強化は、情報セキュリティを両立しながら実施していくことが大切です。

 

ブランドセキュリティにつながる対策とは

では、企業がブランドセキュリティを実施していくための具体的な対策としてはどのようなものがあるのでしょうか。

ここでは、ブランドセキュリティの対策をご紹介します。

 

商標権の獲得・維持

企業がひとつのブランドを確立していくためには、国内外の商標を取得することも有効な手段です。

自社では独自性の高いブランドを生み出したと考えていても、顧客や他社の視点からは、他の商品・サービスと類似していると感じてしまう可能性も少なくないのです。

適切に商標を維持するためにも、商標権の取得は基本的な対策と言えます。

 

ドメインマネジメント

ドメインはWebサイトの住所となるものであり、簡単に取得できるため企業が複数のドメインを取得するケースもあります。

各部門でドメインを取得し、不要な場合は破棄するというのも良いでしょう。

企業ブランドを保護するためには、関連するドメインをすべて取得し、第三者の利用ができないように対策・管理していかなければなりません。

近年は、Webサイトとブランディングが密接に関わっているため、ドメインマネジメントの徹底はドメインハイジャックを回避することにもつながります。

 

SNSの風評被害・炎上対策

SNSの風評被害や炎上被害は、企業ブランドに悪影響を及ぼします。

SNS上の被害把握や鎮静化は、広報部門による対処だけでは不十分な場合があります。

最近は、SNSでの安易な発信が事故や不祥事へとつながり、瞬く間に世間に広がってしまうケースが非常に多いです。

そのため、情報部門や法務部門、経営部門などが連携し、専門知識や法的な手段を検討しながら適切な対策を講じていく必要があるのです。

時には、知財部門や情報セキュリティ部門、マーケティング部門との連携が求められる場合もあるでしょう。

 

トレンド汚染対策

キーワード検索の傾向や人気度、リアルタイムでの検索回数などを踏まえた、検索トレンドは企業ブランドの確立にも役立つ反面、悪影響を及ぼす恐れもあります。

これを「トレンド汚染」と呼び、企業のネガティブなキーワードだけが検索トレンドに浮上してしまう現象を言います。

トレンド汚染は単なる噂からスタートするケースもあれば、悪意を持った第三者による場合もあり、注意が必要です。

対策としては、検索エンジンの運営元への削除依頼や専門家への相談などが挙げられます。

 

模倣品・模倣サービス対策

ブランドを確立し、商品・サービスの販売をスタートさせると、そのブランドの価値をいち早く見出した顧客や取引先によって模倣品・模倣サービスが生み出されてしまう可能性があります。

商品の流通がインターネット化していることで、最近は模倣品や模倣サービスの手段も多様化し、被害を受けている企業も少なくありません。

手段がIT化されている中でも適切に対処していくには、情報セキュリティ部門と連携を強化しながら知的財産権の確保や情報管理の徹底、正規品識別マークによる区別等の対策が必要です。

 

低評価の口コミへの対処

企業の商品やサービスに対する口コミは、見込み顧客や新規顧客のアクセスや購買意欲促進につながります。

一方で、口コミの内容によっては企業ブランドを損ない兼ねない低評価の内容が掲載されることもしばしばあります。

低評価の口コミが投稿されること自体は、決して悪いことばかりではありません。

しかし、中には悪意のある口コミが投稿されるケースもあり、企業ブランドの価値が低下してしまう可能性があります。

削除可能な場合は、悪質な口コミを削除することで解決できますが、削除ができない場合は丁寧な返信が必要になります。

時には悪い口コミを改善点としていき、共有していくことも大切です。

 

まとめ

ブランドセキュリティを強化していくことは、大切な企業の資産を守るために重要なものです。

適切なブランドセキュリティを講じるためには、ブランドセキュリティに関連するブランドプロテクションやパーソナルブランドセキュリティを取り入れながら具体的な対策を打ち出し、実行していかなければなりません。

企業ブランドは、風評被害や炎上被害などで低下してしまうケースも少なくありません。

企業の資産を守るため、ブランドセキュリティを強化していきましょう。