近年、様々な企業が動画を活用したマーケティングや会社紹介を行っていることから、これから動画制作に取り組もうとしている企業も多いことと予想されます。
しかし、動画制作の経験がないと、何から始めたらいいのか、どれくらいの費用や時間がかかるのか、自社だけで制作できるものなのかといった不安を抱えている担当者の方もいるでしょう。
そこで今回は、動画制作の基本的な流れやスケジュール、注意点、費用について解説していきます。
動画制作の基本を知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
動画制作の大まかな流れとスケジュール
まずは、動画制作の大まかな流れと制作スケジュールを確認しておきましょう。
動画制作の大まかな流れ
動画制作は、大まかに「企画・構成、撮影、編集、公開」という流れで進められます。
この中でも、特に重要となるのが制作目的やコンセプト、ターゲットといった動画制作の主軸を決める企画・構成です。
はじめにこれらを明確にしておくことで、効率良く動画制作を進めていけます。
制作スケジュール
動画完成するまでにかかる期間は、内容にもよりますが1ヶ月~3ヶ月程度が目安です。
工程別ではフィードバックも含め、企画・構成に3週間、撮影に1週間、編集に3週間程度を想定しておくと良いでしょう。
動画制作では、度々フィードバックが発生するため、スケジュールの遅れに気をつけなければなりません。
動画制作だけに専念できれば良いですが、他の仕事と並行して行う場合は、フィードバック会議が延期になる可能性もあります。
予期せぬ遅れに備えて、余裕を持って行動することが大切です。
企画・構成
ここからは、動画制作に必要な作業を工程別に詳しく見ていきましょう。
まずは、動画制作の最初の工程である「企画・構成」についてです。
動画制作における企画・構成とは、制作目的、ターゲット、媒体、動画のスタイルについて決めることをいいます。
動画制作の目的
動画制作の目的は各企業によって様々ですが、よくある目的としては認知度の拡大や販売促進、企業紹介、ブランディングなどが挙げられます。
目的を明確にすることで、動画を視聴した人にどのようなアクションを取ってほしいのかが決まります。
目的は、「自社を知って欲しい」といった抽象的ものよりも、「自社を知って商品を購入して欲しい」など具体的に設定することで、後のターゲットや動画のスタイルについても決めやすくなります。
ターゲット
具体的な目標が決まったら、ターゲットを設定します。
例えば、販売促進が目的なら対象となる顧客層をイメージすると良いでしょう。
ターゲットが明確になれば、動画の雰囲気や長さ、強調すべき部分なども見えてきます。
配信する媒体
ターゲットの次は、どの媒体で配信するかを決めます。
流行に敏感な若年層がターゲットであればInstagram、幅広い層に訴求したいのであればYouTubeを利用するなど、各媒体とターゲットとの相性を重視しましょう。
また、媒体と併せて動画の長さも決めます。
広告用の動画は、媒体によってユーザーに心地よく見てもらえる長さが異なり、YouTubeなら5秒~2分、TwitterやInstagramなら30秒程度が目安です。
動画のスタイル
上記を踏まえて、具体的な動画のスタイルを決めます。
例えば、求職者に向けた企業紹介が目的なら、実際に働いている社員へのインタビュー形式の動画もおすすめです。
また、商品をナレーションで紹介したい場合は、アニメーションにするか実写にするかも考えます。
ターゲットや商品の特徴に合わせて、最適な表現方法を選択しましょう。
動画撮影
企画・構成が決まったら、実際に動画撮影を行います。
ここでは、撮影前の準備から撮影のポイントまでをご紹介します。
撮影前の準備
撮影を始める前に、企画・構成で決めた内容を台本や絵コンテに落とし込んでいきます。
どのような素材を使うのか、映像と音声を同時に撮影するのか、または別撮りにするのかといったところまで決めておきましょう。
細部まで決めておかないと、撮り直しや追加の撮影などが発生し、余計な費用や時間がかかってしまいます。
動画撮影に必要な機材などを準備します。
台本や絵コンテが完成したら、カメラや照明などの撮影機材と撮影場所を確保します。
個人で揃えるのが難しい場合は、レンタルするのも一つの方法です。
動画撮影
撮影機材が揃ったら、いよいよ動画撮影に入ります。
まずは、カメラワークを決めましょう。
カメラワークには、様々な技法がありますが、代表的なカメラワークは次の通りです。
・フィックス
カメラを固定し、動かすことなく撮影する技法です。
最も基本的な撮影技法で、情報を安定して伝えられることがメリットです。
・ズームイン、ズームアウト
レンズの焦点距離を変えることで、徐々に被写体に近づけるまたは徐々に被写体から離していく技法です。
ズームインは注目してほしいものに寄り、ズームアウトは視点の集中を解いたり被写体が置かれている状況を見せたりする目的で使われることが多いです。
・パン、ティルト
カメラを左右または上下に動かして撮影する技法です。
広い風景を撮影したい時や視点を移動させたい時、被写体のディティールを見せたい時に用いられます。
いずれの技法でも手振れなどが発生しないように、カメラは固定しておきましょう。
動きのない動画なら三脚などに乗せて固定し、動きのある動画なら台車や専用の機材を使うのがおすすめです。
また、同じ映像が続くと視聴者を飽きさせてしまう可能性があるため、1カットを短くしたり別角度から撮影したりして変化をつけることも大切です。
動画編集
撮影した動画や画像などの素材を編集ソフトに読み込み、動画編集を行います。
動画編集の大まかな手順は、以下の通りです。
・素材のトリミング
通常は、撮影した素材をすべて使うわけではなく、必要な部分のみをトリミングして使用します。
動画のテンポが悪いと伝えたいメッセージが的確に伝わらないため、不要な間は極力カットするようにしましょう。
・字幕、テロップ
字幕やテロップ、効果音やBGMをつけるなどの加工を行います。
強調したい言葉や印象付けたい言葉はテロップを表示したり、目立つフォントや配色にしたりすると、効果的に内容が伝わります。
特に、文字サイズが小さすぎるとユーザーに読んでもらえない可能性があります。
スマートフォンで視聴するユーザーも想定して、できるだけ見やすい大きさにしましょう。
また、人が1秒間に読める文字数は4文字程度と言われているため、動画の長さも考慮した上で、テロップの表示時間にも配慮が必要です。
・効果音、BGM
場面転換や強調したいシーンなどに効果音やBGMを入れると、動画にメリハリが出ます。
動画の雰囲気や演出に合ったBGMを流すことで、より魅力的な動画が完成します。
ただし、ここで注意しなければならないのが、全ての楽曲には著作権があるということです。
フリーBGMが出ない限り、楽曲を動画で使用する際は、著作権管理団体への申請と使用料の支払いが必要です。
また、無料・有料に関わらず、商用利用や加工の有無などについては利用条件が記載されているので、よく確認してから使用してください。
動画公開
動画が完成したら、配信したい媒体を通してユーザーに動画を公開し、その成果をしっかりと分析しましょう。
各媒体に動画を公開
動画が完成したら、配信したい媒体に動画をアップロードします。
公開方法は、各媒体によって異なるため、事前に調べておくとスムーズに行きます。
例えば、YouTubeの場合は、公開・限定公開・非公開の3種類から公開する範囲を気分で決めることができます。
・公開:全てのユーザーが視聴できます。
・限定公開:動画へのリンクURLを設定し、そこにアクセスしたユーザーのみが視聴できます。
・非公開:自身と許可したユーザーのみが視聴できます。事前に許可する人を設定する「プライバシー設定」を行う必要があります。
データの分析
動画は公開して終わりではなく、必ず視聴回数やクリック率、コンバージョン数、視聴維持率などについてデータ収集を行いましょう。
例えば、クリック率を見ると、広告が表示された回数のうち、動画がクリックされた回数の割合が分かります。
また、コンバージョン数は、購入や問い合わせなどの動画の目的が達成された回数を示しています。
視聴維持率は、ユーザーが動画をどれくらい継続して視聴したかを知ることができ、視聴維持率が下がっている部分は、動画の視聴を離脱した人が多い箇所となります。
これらのデータを収集して分析することで、目的をどの程度達成できているかや今後の改善点などが分かります。
動画制作で注意すべきポイント
ここからは、動画制作で注意すべきポイントを解説していきます。
自社で動画制作をする場合と外部に委託する場合、どちらにも共通することなのでぜひ確認してください。
メッセージやターゲットがぶれないようにする
動画制作においては、メッセージやターゲットに一貫性を持って進めることを心掛けてください。
動画はまず、誰に何を伝えるのかというゴールを設定してから制作に取りかかります。
途中でゴールがブレると、メッセージ性が弱まって視聴者の心に届かずに目的を達成できません。
そうならないためにも、企画の段階でできるだけ具体的なゴールを設定することが大切です。
また、メッセージを詰め込みすぎても、ターゲットとなるユーザーに刺さりにくい動画になってしまいます。
動画の長さにもよりますが、1つの動画に込めるメッセージは1つ、多くても2つまでが基本的です。
権利関係に注意する
著作権や肖像権、商標権などに関するチェックが甘いと、せっかく動画が完成しても権利侵害を指摘され、動画を公開できないといった事態になりかねません。
修正して公開するとなると、余計な費用や時間がかかってしまいます。
外部に委託して役者をキャスティングする場合も、契約期間を過ぎて動画を使用すると、使用権の侵害となることがあります。
撮影時の背景の映り込みなども含めて、権利侵害が起きないように気を付けましょう。
予算やスケジュール通りに進める
費用や時間が予想以上にかかってしまわないように、あらかじめ動画制作について理解を深めておく必要があります。
動画制作の各工程にどれくらいの費用や時間がかかるのか、またその作業は本当に必要なのかをしっかりと検討しましょう。
特に、外部に委託する場合は、完成した動画を見てから修正を依頼せずに済むように、綿密なコミュニケーションが求められます。
修正が増えてしまうと納期に大幅な遅れが出てしまう可能性もあります。
動画制作にかかる費用
最後に、動画制作にかかる費用の相場を、自社で制作する場合と業者に依頼する場合に分けてご紹介します。
自社で制作する場合
自社で動画制作を行う場合は、撮影機材や編集ソフトなどの費用が発生します。
本格的な機材を使用するとなれば、数十万円かかることもあります。
しかし、最近はスマートフォンでも比較的、画質の良い動画を撮影できるので、機材にこだわらなければ、撮影に関してはほとんど費用がかからないでしょう。
編集については、どの編集ソフトを使うかで変わります。
無料の編集ソフトもありますが、使える機能に制限があるため不便な点も多いです。
そこで、高度な編集を行いたい場合は、サブスク型の編集ソフトを利用するのがおすすめです。
月額料金はソフトによっても幅がありますが、1,000円前後が目安です。
中には、無料体験を実施しているケースもあるため、一度試してから検討するのも良いでしょう。
業者に依頼する場合
動画制作会社に依頼する場合は、企画から編集までの段階のうち、どこまでを依頼するかによって費用が大きく異なります。
全ての工程を一括で依頼した場合の費用は、大体30万円~200万円程度が一般的です。
また、動画の目的や種類によっても変わるため、費用を確認したい時は複数の動画制作会社から見積もりをもらった方が確実です。
業者に依頼すると、自社で制作するよりも費用はかかりますが、社内の負担が減ることやスキルの高いプロに制作してもらえるといったことがメリットです。
動画制作に掛けられる余裕がどれくらいあるかを考慮した上で、自社制作と外部依頼のどちらを選択するか検討してみてください。
まとめ
今回は、動画制作の流れや注意点について解説しました。
企業活動における動画の重要性は年々高まってきており、いかに質の良い動画を作れるかで成果が大きく異なります。
自社で制作する場合も業者に依頼する場合も、目的を達成するためにはまず、基本的な動画制作の流れを把握することが大切です。
その上で、伝えたいメッセージやターゲットを明確にし、この軸がブレないように作業を進めていきましょう。
自社だけでは手が回りそうにない、プロにしか作れないような動画を制作したいというような場合は、動画制作会社へ依頼するのもおすすめです。