企業ブランドを守るためには、企業の評判を傷つけるリスクについて知っておく必要があります。
これをレピュテーションリスクと言い、正しく理解して対策を取ることが重要です。
そこで、この記事では企業ブランドを守るために行いたい対策について解説していきます。
レピュテーションリスクとは?損失が大きいって本当?
レピュテーションリスクとは、企業に対してネガティブな評判が広まったり、損なわれたりした時に生じる損失を意味する言葉です。
企業やブランドはもちろん、顧客やパートナー企業、投資家など関係する相手に対して影響を与える可能性が考えられます。
レピュテーションリスクによるマイナスイメージはもちろん、悪い評判などがきっかけで起こることもあります。
企業はブランドイメージがあり、それに伴って顧客からの信頼を得ている部分がありますが、レピュテーションリスクによって信頼が損なわれてしまった場合、元通りの信頼を取り戻すには企業として真剣に取り組んでいく必要があるでしょう。
それだけレピュテーションリスクによるダメージは大きなものとなり、できるだけ悪い評判が広がらないためのリスク管理も重要です。
レピュテーションリスクの原因
レピュテーションリスクは、どのようなことが原因となって起こるのでしょうか?
ここでは、レピュテーションリスクの原因について解説します。
不祥事、コンプライアンス違反
企業が直面するレピュテーションリスクのひとつに、コンプライアンス違反や不祥事があります。
企業が法律など社会的な規範に反することを行っていた場合はレピュテーションリスクにさらされてしまいます。
コンプライアンス違反は、ユーザーや顧客からの指摘で発覚することもあれば、社員など内部からの告発で問題が明るみになるケースもあるでしょう。
コンプライアンス違反としては、以下のような違反事例が存在します。
・労働基準法に反した時間外労働、休日労働
・最低賃金以下の賃金
・残業代未払い
・予告の無い解雇
・雇用差別
・性別差別
・セクハラ
・粉飾決済
・架空請求
・損失補償
・インサイダー取引
・脱税
・業務上横領
・出資法違反
・著作権法違反
・食品衛生法違反
・持ち出しによる個人情報漏洩
・サイバー攻撃による情報漏洩
・個人情報の目的外利用
・紛失による情報漏洩
コンプライアンス違反には、経理や情報漏洩、労働問題、法令違反などによるものがあり、年々様々なコンプライアンス違反がニュースに取り上げられています。
2018年に起こった振袖レンタル店「はれのひ」が突然店舗を閉店したニュースがありましたが、これは経営状態が悪化しているにもかかわらず、粉飾決済をして融資を受け続けた結果、債務超過に陥りました。
また、2014年にベネッセコーポレーションでは社内管理のデータベースから個人情報がグループ会社の業務委託先の社員によって不正に持ち出された結果、約3,500万人の個人情報が漏洩しました。
これらは、不祥事やコンプライアンス違反で起こった問題です。
情報の拡散による影響
これも社員の不祥事に該当する部分もありますが、従業員の不祥事をSNSなどで情報拡散したことでレピュテーションリスクの原因になってしまいます。
勤務中に廃棄商品を手づかみで食べて捨てている、口に直接入れて吐き出した、食品を保管する冷蔵庫や冷凍庫に入り込むなど、勤務中のふざけた行為を動画や画像で撮影してSNSなどに投稿する「バイトテロ」という行為が横行し、一時期は様々な内容の投稿がきっかけで企業が追い込まれる事態がありました。
これらの内容も企業にとってはレピュテーションリスクになります。
特に会社の規模が大きいほど、現場までしっかり監督できなくなってしまうため、リスクが高くなります。
過去にピザーラで起こったバイトテロでは、店内の冷蔵庫やシンクに女性アルバイトが入り、その写真をSNSで公開したことで炎上、結果的に経営していたフランチャイズ店は信頼回復できずに破産申請をしました。
このような情報の拡散による影響は大きなものとなりやすいでしょう。
根拠のない内容
本来、顧客や消費者の信頼や期待を裏切った際にレピュテーションリスクが高まりますが、実は根拠のない噂や内容によっても被害を受けてしまう可能性があります。
例えば、製品やサービスの欠陥、質の低下などが問題となっています。
現代はSNSで評判などを調べる機会もあり、感情的になった企業の誹謗中傷を書き込んでしまう方も少なくありません。
書かれた内容が事実かどうかではなく、人の関心を多く集めた内容ならあっという間に拡散されてしまうのです。
これらの内容の信ぴょう性よりも、話題性によって拡散されやすいので、根拠のない内容から守るには漠然とした対応が必要です。
レピュテーションリスクとなるコンプライアンス違反は多い?
レピュテーションリスクになる主な要因をまとめてみましたが、実はコンプライアンス違反が原因となる問題は日常的に起こっています。
どの業界に多い問題などはなく、様々な業界で問題になっているのは明らかでしょう。
ここでは、様々な業界で問題になった身近なコンプライアンス違反についてご紹介します。
個人情報保護法による重大なコンプライアンス違反
ラジオ系YouTubeとして活躍しているA氏のもとに契約しているスマホ会社の店舗から営業の電話がかかってきました。
その後、担当者からXとInstagramから直接DMが届き、その内容には「営業電話をかけたらA氏の声にそっくりで名前も同姓同名だったため思わずDMした」という内容だったといいます。
個人情報を取り扱う企業や店舗では、顧客の氏名や電話番号などの個人情報を保有していますが私的な利用は個人情報保護法違反となります。
この事案は重大なコンプライアンス違反となってしまいます。
管理職主導によるコンプライアンス違反
コンサルティング会社B社では、会社と管理職が労働基準法違反として書類送検されました。
これは法定労働時間を大幅に超過する残業を社員にさせていたからです。
本来であれば、労働環境は人事や労務部でチェックできるものですが、管理職が主導していたことが原因で起こりました。
レピュテーションリスクを軽減させるには?
様々な業界で起こりやすいレピュテーションリスクを軽減させるには、どのような方法が適しているのでしょうか?
ここでは、レピュテーションリスクの軽減について紹介します。
基本方針などを決めていく
レピュテーションリスク軽減のためには、基本方針などを決めていきましょう。
基本的な方針は、どの会社も似たようなものになりがちですが、企業の存在理由であることや社会に対して企業が約束するものです。
理念を中心に考えておくと、遵守するべきものも従業員に伝わりやすいでしょう。
危機管理マニュアルを作る
レピュテーションリスクのマネジメントとして重要なのは、危機管理に対応するマニュアルを作成することです。
問題が起こった際に社内フローなどを事前に決めておくと、経営層や従業員全体でも危機管理対応が理解できます。
スムーズに作業ができるように、事故を起こさないようにしましょう。
従業員教育を徹底する
近年増加傾向にあるバイトテロなどのレピュテーションリスクを抑えるために、従業員の教育を徹底的に行いましょう。
定期的に研修を実施するなどの取り組みで、不祥事が起こりにくい社風や雰囲気を作るのがポイントです。
研修は実際のSNS投稿、賠償請求などの具体的な例を取り上げ、たったひとつの問題で多くの人の人生が変わってしまうことを気付かせるようにしてみましょう。
研究や教育が終了した時点で同意書や契約書の提出を促すと、さらに高い効果が期待できます。
迅速な情報発信
レピュテーションリスクを検討しつつ、迅速な情報を発信することで透明性も確保できます。
企業がレピュテーションリスクに直面した場合、できるだけ迅速で正確な情報を発信する必要があります。
拡散力のあるSNSなどを通じて情報を発信することで、企業は初期段階のうちにレピュテーションリスクを最小限に抑えることができるでしょう。
リスクを最小限に抑えることができれば、顧客やユーザーからの信頼回復も早くなります。
誤った情報への対応
利害関係者との信頼回復が期待できてきたら、誤った情報に関しての対応も必要です。
SNSなどでは瞬時に拡散しがちな情報ですが、企業でレピュテーションリスクを高めるには、正確で迅速な情報を発信して対応しなければなりません。
誤った情報が拡散されてしまった場合は、これらの情報を早期に発見して事実に基づいた情報への訂正や提供などに努める必要があります。
誤った情報についての対応の速さは、ブランドイメージの保護や信頼回復などに欠かせないものとなるでしょう。
社内のチェック体制や監視を強化する
社員によるバイトテロのような不祥事を少しでも抑制するには、社内でのチェック体制や監視を強化するのが効果的です。
社内のチェック体制は現場によって方法が異なってきますが、コンプライアンス違反を意識した内容にしたり多重チェックを強化したりするなど、違反者に対する厳しい制裁などを周知させることが重要です。
特に上司になると、コンプライアンス違反と知りながら部下に追わせるケースも起こりやすいです。
このような結果にならないように、管理体制を強化しておく必要があるでしょう。
企業ブランドを守るには、レピュテーションリスクについて理解をするだけでなく、問題が起こった際の事例なども確認しておくのが良いでしょう。
一度きりの取り組みでは良い状態で持続することができません。
常に企業ブランドを守るために何が必要かを検討し、ブラッシュアップしていくことがポイントです。
社内でもレピュテーションリスクについての研修会を開くなど、社員1人ひとりの意識改革も必要でしょう。


















